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只今、三部作目を発表中です。 一部は、バンドマンの彼と、彼を想う美沙の切なく哀しい物語。 二部は、美沙の妹、真幸の苦悩と、バンドマンの彼との関わり。 三部は、姉の美沙を探し、自分の存在価値が見つからない妹・真幸が、バンドマンの彼との関わりの中で大人になっていく様子。 ブログランキング参加しています。よかったらクリックしてくださいね^^ 人気blogランキングへ カテゴリ
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――まーちゃん。 頬に冷たさを感じる。雨だろうか。 「まーちゃん…」 酷く重い目蓋をやっとの思いで開くと目の前に高梨の顔があった。目が真っ赤に腫れ、唇を震わせながらただシクシクと泣く。見たことがないほどの表情で泣き崩れていた。 真幸は頭の奥が痺れているような感覚が続いていて、自分に起きた状況に対して、現実感が皆無だった。全身麻酔をしているかのように痺れていて、躰がいうことをきかない。 ようやく聞き取れるほどの小ささで高梨が、ゴメンなさい…、と言っていることに気がついた。 ううん、アヤちゃんのせいじゃないよ――そう言うつもりだったけれど喉が痛くて言葉にならず、結局無愛想のままに沈黙で答えただけだった。 次の瞬間、 下腹部に、痛み。 諦めに似た気持ちが真幸を襲う。 「ゴメンなさい…」 高梨の言葉をようやく聞き取ることができたけれど、それに対して何かを答えようという気持ちには到底なれなかった。 どれだけ時間が過ぎたのだろうか。真幸はようやく立ち上がり、高梨の手を握りながら、よろよろと帰宅した。 玄関扉をあけると異臭がした。ヒューウィーの排泄物の臭いだったけれど、それらを全て取り除く為のエネルギーが真幸の躰にはない。しかしどうやらそんな真幸を高梨は全てを察しているようで、無言のままテキパキと動き続け取り除いていく。 「…本当に…、ゴメンなさい…」 テーブルの向かいに座っている高梨はそう微かに呟いた。しかしその言葉の真意を掴み取ることが真幸にはできなかった。 沈黙が部屋を支配する。 真幸は何かを話そうとした。しかしその気持ちに反して言葉が一切出てこない。そして、自分が今何を考えようとしているのかもよくわからない。 意識、回想、言葉、そして現実の全てが曖昧にぼんやりとしているような、不安定な感覚が真幸を襲い続けている。 太腿に何かが触れたことで真幸は小さく悲鳴をあげた。心拍数が急激に上がり、意識が拡散する。ふと目を落とすと、ヒューウィーが真幸にぴったりと寄り添い、小さく丸まった体勢で強い鼻息をしていた。 「…まーちゃん、あのね」 そう言って高梨は言葉を止め、唇を噛み、涙を溜めてすすり泣き、震えて大きく呼吸をした。高梨も混乱し続けているのだろう。 「…どこから話せばいいのかわからない…。けど……あのね、早川とは昔付き合ってて、会社に入る前から知ってたの…。でも別れてから連絡なくて、……だから、会社に入ったときはビックリしたの。どうしてここに早川がいるの? って。でも昔のことは会社には関係ないし、その時は彼も彼女がいたみたいだし、もう関係ないやって…。その後、また付き合おうよって言われてアヤネすごく驚いて…」 真幸はCDラックの側面を移動している蜘蛛を凝視した。蜘蛛は小刻みに飛ぶように移動していく。 「もちろん付き合ってないよ。だって。…だって、もうその時にはアヤネまーちゃんが好きで…」 蜘蛛はそのまま移動し続け、テレビの裏へと消えた。真幸はその消えたポイントを凝視し続けていた。 「…もっと、もっと早くにまーちゃんに話しておけばよかった…。そうすれば、こんなことにはならなかったかもしれない…」 意識が拡散したまま真幸は高梨の話を聞いていた。予想していたうちの一つであった告白に驚きはなかった。ただ微かに怒りが沸いたけれど、それもすぐに鎮火した。 ああ真幸は無気力なんだね、ともう一人の真幸が見つめているような奇妙な感覚を覚えた。 「…ホントにどうすれば…。まーちゃん。ゴメンなさい…ゴメンなさい…ゴメンなさい…」
by misa1117es
| 2007-11-21 22:38
| [Ⅲ]第二章・真幸の日々
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