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只今、三部作目を発表中です。 一部は、バンドマンの彼と、彼を想う美沙の切なく哀しい物語。 二部は、美沙の妹、真幸の苦悩と、バンドマンの彼との関わり。 三部は、姉の美沙を探し、自分の存在価値が見つからない妹・真幸が、バンドマンの彼との関わりの中で大人になっていく様子。 ブログランキング参加しています。よかったらクリックしてくださいね^^ 人気blogランキングへ カテゴリ
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「アヤちゃん、真幸のことが好きなら、とりあえず手を離して」
数秒の沈黙。その直後に真幸は両腕の自由を得た。上半身を起こして、目の前にちょこんと座っている高梨を見つめる。 「真幸さん」 薄暗闇の中でも解る。高梨はそういって、真幸をまっすぐに見つめているのだろう。 「アヤネ、ほんとうにホンキなんです。ほんとうに真幸さんのことが好きなの」 「でもだからって、普通寝ている隙にキスする?」 「…つい」 「ついじゃないでしょ? アヤちゃんは真幸にキスをする、というか、最初からそのつもりだったんでしょ?」 「そうじゃ…ありません」 「信じられないわ」 重い空気。そして沈黙。 真幸はただ困惑していた。嫌な気分というより、キスされたという衝撃が大きすぎて、自分が何を考えようとしているのかも分からない。 「おこって…る?」 「怒ってはないけど」 そういいながらも真幸は憮然としていた。 「ちょっと待って」 真幸は起き上がり、部屋の明かりをつける。のどの渇きが酷い。台所へ行き水を飲むと、ゴクゴクとのどが鳴った。水に甘味を感じる。 どうすれば良いの――明確な答えを見つけることができない。 寝室に戻る。高梨は真幸のベッドの上でちょこんと女の子座りをしたまま空を見ていた。 「アヤちゃん」 「…はい」 「真幸もアヤちゃんのこと好きだけど、それは普通に友達や同僚として好きというだけで、恋愛感情は持てないわ。キスされて驚いたけれど、ただそれだけ。悪い気はしないけど、嬉しくもないな」 「……」 真幸はベッドに腰掛けて高梨を見つめた。高梨も真幸を見る。 高梨は大人びた表情をしていた。憂い、というのだろうか。真幸を見つめる視線に、女として相手を求めるときの官能的な表情が含まれている。真幸はその表情に視線をはずすことを忘れて魅入ってしまっていた。 高梨は時々何か会話を切り出そうとしては、言葉を飲み込む。小ぶりの唇がキュッと結ばれて、少し震え、愛くるしい形をしていた。 「でも…、アヤネはやっぱり真幸さんが好き。自分ではどうしようもないの。だって、だって…」 高梨の大きな瞳から一粒の涙がこぼれた。その瞬間に真幸は許してあげようと感じた。 真幸はできるだけ優しい気持ちに切り替えた。そして表情を作る。 「もういいわ。よく考えてみたらキスされただけだしね。もう気にしてないよ。アヤちゃんのこと嫌いになってないから泣かないで」 そういって高梨の頭をなでる。緊張の糸が切れて、ふわぁと大きなあくびが出た。 「さ、じゃぁもうこの話は終わり。アヤちゃん、もうキスしないでね」 「…はい」 「真幸は眠いから寝るね。アヤちゃんも寝てね」 「あの…」 「ん?」 「真幸さんのこと、まーちゃんって呼んでもいい…?」 「まーちゃん?」 真幸はプッと吹き出してしまった。そんな愛称で呼ばれたことは今までにない。可愛い過ぎはしないだろうか。 「まーちゃん……ね。なんか変な感じ。しっくりこないな」 まーちゃんと自分を呼んでみる。でも、嫌な感じはしない。 「いいよ。まーちゃんで」 高梨は嬉しさで柔和な表情になる。少女のように純粋な愛くるしい喜びの表情だった。 「あ、でも仕事のときはダメだからね」 「もちろんわかってます! ありがとう…。まーちゃん」 高梨は少しの恥じらいみせる。その感じがまた愛くるしい。 「さ。アヤちゃん寝ようよ。真幸はもう眠くて」 真幸はもう一度ふわぁと大きなあくびが出た。 「まーちゃん」 「ふわぃ?」 「一緒に寝てもいい?」 「それはダメ」 「はい」 部屋のスイッチを切り替える。見慣れたオレンジ色の薄暗さが部屋を支配した。 「おやすみなさい」 ベッドにはまだどうにか温もりが残っていた。少ない温もりを求めてもぞもぞとヒューウィーが足元に入ってくる。彼はどうやら寝床が気に入らないらしい。辺りの匂いをかぎ、くるくると回り、シーツを引っかく。そうしてようやく満足したらしく、真幸の両足の間にぴったりと嵌って落ち着いた。ヒューウィーはとても暖かく、真幸を温めてくれた。優しい体温。 まるで動くカイロだな――そんなことを考えていた。 全身が温まってくると頭の隅が痺れてきた。ヒューウィーが呼吸する音。秒針が動く音。遠くでアイドリングの音。色々な音が明瞭に聞こえてくる。だが意識は少しずつ遠くなっていく。 冷えた空気が侵入してきた。暖かくてやわらかい何かが真幸に寄り添う。そして幸せそうな呼吸が耳元で聞こえた。ダメでしょ…、と声に出したつもりだが出ていないかも知れない。もう面倒くさい。眠い。
by misa1117es
| 2007-05-05 11:20
| [Ⅲ]第二章・真幸の日々
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