ありがとう。
ご訪問くださってありがとうございます。
只今、三部作目を発表中です。 一部は、バンドマンの彼と、彼を想う美沙の切なく哀しい物語。 二部は、美沙の妹、真幸の苦悩と、バンドマンの彼との関わり。 三部は、姉の美沙を探し、自分の存在価値が見つからない妹・真幸が、バンドマンの彼との関わりの中で大人になっていく様子。 ブログランキング参加しています。よかったらクリックしてくださいね^^ 人気blogランキングへ カテゴリ
全体 [Ⅰ]ごあいさつ [Ⅰ]第一章・1 [Ⅰ]彼の作品 [Ⅰ]第二章・1 [Ⅰ]第二章・2 [Ⅰ]第二章・3 [Ⅰ]彼の作品 [Ⅰ]第二章・4 [Ⅰ]第三章・1 [Ⅰ]彼のエッセイ [Ⅰ]彼のエッセイ [Ⅰ]第三章・2 [Ⅰ]日々 [Ⅰ]日々その後 [Ⅰ]第三章・3 [Ⅰ]彼のエッセイ [Ⅰ]彼のエッセイ [Ⅰ]第三章・4 [Ⅰ]第三章・5 [Ⅰ]彼の作品 [Ⅰ]彼の作品 [Ⅰ]彼の作品 [Ⅰ]彼の作品 [Ⅰ]第三章・6 [Ⅰ]第三章・7 [Ⅰ]第四章・1 [Ⅰ]第四章・2 [Ⅰ]最終話 [Ⅰ]続・小説1 [Ⅰ]続・小説2 [Ⅰ]続・小説3 [Ⅰ]続・小説4 [Ⅰ]あとがき [Ⅰ]関連リンク先 [Ⅱ][その後]ごあいさつ [Ⅱ][その後]第一章・1 [Ⅱ][その後]第一章・2 [Ⅱ][その後]第一章・3 [Ⅱ][その後]第二章・1 [Ⅱ][その後]第二章・2 [Ⅱ][その後]第二章・3 [Ⅱ][その後]第二章・4 [Ⅱ][その後]第二章・5 [Ⅱ][その後]第二章・6 [Ⅱ][その後]第三章・1 [Ⅱ][その後]第三章・2 [Ⅱ][その後]最終話 [Ⅱ][その後]あとがき [Ⅱ][その後]音源リンク先 [Ⅱ]ライブ無料音源配布 [Ⅱ]CD・関連リンク先紹介 [Ⅲ]ごあいさつ [Ⅲ]序章 [Ⅲ]第一章・出会い・メール・心 [Ⅲ]第二章・真幸の日々 [Ⅲ]第三章・展開・メール・心 お知らせ 未発表 ライフログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
見たことのない風景。覚えのない配色。やけに気に障る雑音。その中で真幸は朦朧としながらも明確な違和感を覚えながら目覚めた――どうして自分はこんな所にいるんだろう?
女性と目が合う。女性はなにか言葉を発したようだったが、真幸は聞き取ることができない。大丈夫ですか、そう唇が動いているように見えた。 あ、そっか歓迎会の途中だったんだ――真幸は状況を把握する。高梨、とどうにか名前を思い出すと、ようやく言葉を発することができた。 「…あ、高梨ちゃん。ごめんね、わたし…」 「よかった。やっとおきたぁ。心配だったんですよ、工堂さん。大丈夫ですか?」 「…うん。…大丈夫」 高梨は真幸の顔をじっと見つめている。 「高梨ちゃん…。ありがとう」 真幸にそういわれて高梨はやや困惑した表情を一瞬だけ見せたが、すぐにいつものにこやかな表情に戻った。 「あ、水持ってきましょうか?」 「ううん。大丈夫。気持ち悪くはないわ」 「そうですか。それならいいんですけど」 「わたし、いつから眠ってたの?」 「えっと。多分四十分くらい寝てました。もうすぐ終わりな雰囲気ですよ」 「…そう」 酔いつぶれてしまった事実が真幸を暗い気持ちにさせていた。どうしてこんなことになってしまったのだろう。 そう、確か、山下が話しかけてきて――真幸はその続きを思い出すことができなかった。自分はどんなことを発言したのだろうか。しかし、憤った気持ちになったことは覚えている。どうして憤ったのだろう? 山下がいたら聞いてみようとあたりを見渡してみたが、同僚と一緒だったはずの山下はどこにもいなかった。そうしているうちに、あの時のふたりのあきれたような、蔑むような顔を思い出して、真幸はまた気が重くなった。 「工堂さんってお酒弱いんですね。綾音はまだ大丈夫。飲みたりないくらい」 真幸は高梨の話し方が気になり――真幸はまだ大丈夫。真幸もまだのみたりないよ――と小さな声で高梨の口調を真似て言ってみた。気恥ずかしさが全身を包む。 「工藤さん? 何か言いました?」 「…いえ。なんでもありません。あ、それより…」 真幸はわずかに緊張する。 「もしかして早川君、介抱してくれてたのですか?」 「介抱してましたよ。工藤さんが眠ってグラスを倒すとすぐに気づいて飛んできて介抱してました」 「すぐに?」 「ええ、すぐにです」 真幸は恥ずかしい気持ちよりも、申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになってしまう。感謝を伝えようと早川を探して辺りを見回すと、早川は相変わらずのテンションでおどけていて、同僚や上司を笑わせていた。真幸はその輪には加われそうにない。眺めるだけで精一杯だった。 「工堂さん。仕事じゃないときは真幸さんって呼んでいいですか?」 「え? うん? はい。あ、いいですよ」 高梨は嬉しそうな笑顔を湛えて、真幸の瞳をじっと見つめる。真幸は高梨の唇が動いたのをただ眺めていて高梨が何を言ったのか読み取れなかったが、それよりも、つややかなグロスが艶っぽく光っているのが気になってしまう。歓迎会の始まりのときはグロスを塗っていなかったのに。 「真幸さん。今日一緒に帰りましょうね」 高梨の透き通るような満面の笑顔に真幸は見とれてしまって、うなずくことしかできなかった。
by misa1117es
| 2007-03-01 18:53
| [Ⅲ]第二章・真幸の日々
|
ファン申請 |
||